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「シュウさんはすごいです。芯があって、仕事もしっかりしていて。私なんか、この絵の感想は『なんだか怖いな、不思議だな』しかなくて……」
同じ絵を見ても、シュウさんはもっと深いところで色んな情報を豊かに感じ取れるってことだ。
夏に解いた数列のナゾにしてもそうだ。私には訳がさっぱりわからなくて怖いくらいだったのに、シュウさんは今まで培ってきた知識と状況整理でナゾを解いてしまった。
「そうですね、数字を学ぶというのは、その分感受性が豊かになる、ということかもしれません」
私がシュウさんにアコガレているのは、こういうところかもしれない。物知りで、だけどそれをひけらかすんじゃなくて、生活の豊かさや感受性に落とし込んでいくところ。
「私……やりたいこととか、夢もなくて、大学も漠然としたまま進学しちゃったんです。だからお金だけはもしものために貯めておこうって、コンビニバイト三昧になってしまって」
「お金を貯めるのも大事だと思いますよ。ちなみに、美澄さんは何学部ですか?」
「社会学部です」
「いいですね。社会学部。マクロや統計が関わってくる面白い分野です」
ほら。やっぱり同じ『社会学部』という単語からも、こうして培ってきた知識がすっと出てくる。
シュウさんは本当に数学を愛しているんだ。
話していると、その息遣いがひしひしと伝わってくる。
「私……シュウさんが数字や理系の話をしているところが、好き、かもしれないです……」
数字の話をして生き生きと輝いているシュウさんを、いつまでも見ていられる。そういう意味を込めて、私の口からすっと本心が出てきた。
言葉の後、ほんの少し目を丸くしたシュウさんと、一瞬視線が合う。
ちょっと待って……私、今とんでもないこと言っちゃった?
「あ、ああー! 『好き』っていうのは、へ、変な意味じゃないんです。そ、そのぉ……!」
「──あ! 店員さんとイケメンお兄さんじゃーん!」
その時、私たちの背後で陽気な声がした。
振り返ってみると、夏休みにポール・ナッツを買いに来ていた美術部四人組がいた。
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