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*  私がバイトをしているコンビニチェーンは『イデマート』という名前だ。井出(いで)さんが始めたのかなんなのか、名前の由来はよくわかっていない。店員の数は十五人から二十人くらいいる。  大学の学科も漠然と決めてやることもない私は、このバイト先でたくさん働かせてもらっていた。  高校と駅が近くにあるので、お昼時のレジはいつも殺人的だ。  だけど手帳を拾ってくれたお兄さんがコンビニの常連になって以来、そんな殺伐とした時間でも、彼の姿を見つけてはなんとなく気分がよくなる。  だから、先日あった女子高生たちの横柄な態度も「若気の至りかなぁ」なんて思って、許せてしまうのだ。  今日も私は気分が上向きだったので、普段しぶっているゴミ出しも率先して引き受けた。コンビニの外へ出て、駐車場を横目にゴミ捨て場へ向かおうとする。 「ん?」  なんだろう、駐車場のアスファルトに、何かが書いてある。 11100 「なにこれ」  先の尖ったものでアスファルトにがりがりと字が書いてあった。駐車場の縁石の角が落っこちてかけらになってしまっているから、それを使ったらしい。  誰かの落書き? それにしては、子供にけんけんぱーができるような大きさの文字ではないし……。  それにこれ、数字だよね? だとしたら、いったいなんの数字だろう?  少し考えてみたけど、意味がわからない。  郵便番号は七桁だし、電話番号でもないし。 「なんか不気味……」  夏の蒸し暑さが嘘のように、背筋に寒気が走った。  目の前に書いてあるものの意味が理解できないって──すごく怖い。  自分でも気づかないうちに業務用のデッキブラシを取って掴んで、バケツから水を流して床を綺麗にしていた。  不気味な数字の羅列が、これで跡形もなく綺麗になった。
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