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「──あの……」 「あ、はい!」  ふと気がつくと、私は今日もレジに立っていた。  やばいやばい、かんっぜんに一瞬意識が飛んでた。  手から落ちそうになっていたPOSリーダーを持ち直して、お弁当とアイスを読み取る。 「お弁当が499円、アイスが330円、合計で829円です……あれっ!」  顔を上げると、お客さんはあの理系のお兄さんだった。私と目が合った瞬間、唇がすっと弓なりになる。 「こんにちは」 「こ、こんにちは!」  お兄さんは、お昼時はいつもお弁当しか買わないのに、今日はアイスも買っていた。しかも、女子高生たちがいつも買っている、ちょっとお高めポール・ナッツのカップアイスだ。  私はとっさにちらりとお兄さんの後ろを覗いた。もう並んでいるお客さんはいない。そういえば、お兄さんはいつも列の最後尾に並んでいる。ピークを避けているのかしら。 「めずらしいですね、お兄さんがアイスを買うなんて」  本を脇にはさんでスマホ取り出していたお兄さんは、一瞬だけ私の話題の唐突さに固まって、すぐに薄く笑う。  あ、えくぼ。 「そうですね、よく同じ時間に鉢合う女子高生たちを見ていたら、私も食べたくなってしまいました。──お会計は二次元コードで」 「はい! 読み取りますね」  POSリーダをお兄さんのスマホにかざす。ちょっとだけ距離が近づいて、さっきも一瞬目が合った時のことを思い出して、胸が高鳴る。  指の先から緊張がバレていないといいんだけど。  お兄さんが選んだポール・ナッツはチョコクッキー味だった。好きなのかな? 「袋をお分けしますか?」 「いえ、一緒で大丈夫です」  助かります!!  弁当とアイスを同じ袋に入れて、お手拭きは二ついれておいた。その間にも、そわそわとお兄さんの顔をのぞいてしまう。  お兄さんは、コンビニの裏手の謎の数字をもう解いてくれただろうか──。  いやでも、彼はたまたま数字が書いてあるのを見つけただけだ。興味があるから消さないでおいてくれとは言われたけど、うちのコンビニのことに巻き込むのは迷惑だよね。それに、お昼休みを返上させるわけにもいかないし……。 「ありがとうございました……」  私からレジ袋を受け取ると、そのまま立ち去るかと思ったお兄さんがちょっと怪訝そうな顔で私を見た。
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