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#1 卒業式のバス停
「吹雪がすごいっすね。パイセン」
季節外れの大雪が荒れ狂う卒業式の日でのバス停で二年間と一緒にバスを待った同志である柳十和子があたしに微笑んだ。
「そうだね」
そんな彼女は二年生。あたしは三年生で今日卒業をする。二月から高校に来ることもそうそうなくて会うこともなかった。友達じゃないから連絡先なんか知らないもん。部活が一緒って訳でもない。兄弟がいて友達なんかでもない。ただただと朝一緒にバス停で高校行きのバスを一緒に待つ間だけ話す仲だっただけだ。二年間とほぼほぼ毎日と顔を見合わせて話して楽しかったことは本物の気持ちだ。ぼっちで陰キャな自分にはこの瞬間が堪らなく嬉しくてバスなんか遅れて来て欲しいと真剣に思ったもの。
「バス。何分遅れになるっすかね」
「ぅんーー20分? 前に同じ吹雪のときのバスなんか42分が55分だったこともあるからしばらく来ないかもね」
バス停は小屋状で365度とアクリル板で長椅子とバス時間表が張られている。その長椅子にあたしは腰をかけて足を組んでいる。その正面に十和子は立ってあたしを見据えている。モノ言いたそうに。
「どうしたの? 横に座りなさいよ」
あたしの言葉を無視するかのように十和子は背負っていたカバンを器用に半分降ろして中へと手を入れてますぐった。何かを探しているのが分かる。
でも、
「いいから座りなさいって」
でも。
「十和子!」
時間がない。
時間が足りない。
今までの分も秒も。
今日でお終い。
卒業式が終われば――
「お願いだから。座ってよ」
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