おいしいChocolate

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振り向いた先に立っていたのは写真の彼女だった。瞬間、持っていた葉書はゴミ箱に落ち、 「あのぅ・・、特注で予約だけでも出来ませんか? もうすぐ主人の誕生日なんですが、ここのチョコレートをサプライズプレゼントにしたいんです」という囁くような声が聞こえてきた。 あの日と同じように、控えめで申し訳なさそうに懇願する姿だけれど、この女はお人よしのわたしは断らないと確信している事は見て取れた。 お菓子どころか、きっと料理も作れない。デパートの惣菜の紙袋を抱えた彼女を見てると逆に哀れだなと思う。 「・・いいですよ。この世にひとつのチョコレートを作りましょう」 最悪の味方を付けてしまったことにも気付かず、「これからも末永くよろしくお願いしますね」と、ほっとした表情で彼女は出て行った。 🍫🍫🍫 お店「ちー助」専用のコックコートを身に着ける。 カカオ豆の袋を抱えながら、「おばあちゃん。見えないようで、世の中上手く回ってるよね!!」と、天窓を見上げて言ってみた。  ー 先輩楽しみに待ってて。どんなものが出来るのか。さぁ、わたしのおいしい時間の始まりだ - (了)
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