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37話
カサンドラ達がカーシン国へ向かったすぐ、屋敷に妹からの手紙が早馬で届いた。受け取ったルリアは手紙をみて、ため息をつく。
「封筒にはうまく付けず、中の手紙は毒まみれかい……あの子もこりないねぇ」
だが、令嬢のあの子がこの毒薬――いや薬のレシピを手に入れ、調合しているとは考えにくい。これは数十年前、ある国で婚約破棄の末、心を痛めて食べることをやめてしまった姫のために作った、少しの量で体をふくよかにする薬だ。
数年前。この薬を作るレシピと魔導具を盗んだ、弟子をあちらこちらで探してみれば、こんなところで悪さしているなんてね。
その姫のために作った薬だ。他の者が使えば毒にもなる……あの子、シャリィをそこまで掻き立てるものはなんなのかね。姉のカサンドラから両親、使用人たち、そして婚約者を奪ったのにまだ足りないと見える。
訳がわからない。
ルリアは手紙をすぐに薬の効能を消して、屋敷の中へと持っていく。
ーーこんな意図的に使うなんて、怖い子だ。
♱♱♱
カーシンにあるララサ街の冒険者ギルドで、パーティクエスト一人20匹、合計スライム100匹の討伐クエストを受けた。アオ君が操る荷馬車に乗り、前回採取クエストとピクニックをした、近くのロロの森にカサンドラ達は到着した。
ロロの森にアオ君を先頭に、カサンドラとシュシュ、スズとチロちゃんとはいる。森に入ってすぐ草むらからポヨヨーンとつぶらな黒い瞳、両手に乗りそうな大きさ、丸いフォルムの半透明なスライムが現れた。
「きゃぁーシュシュ見て! 思っていたスライムと違いますわ」
「ドラお嬢様、私もです……丸くて、つぶらな瞳が可愛い」
カサンドラとシュシュは初魔物のスライムと出会い興奮する。今回、出会った魔物のスライムは青、赤、緑の3色。数匹のスライムがカサンドラ達の前でポヨヨン、ポヨヨーンと飛び跳ねた。
「あ、こら! カサンドラ、いくら可愛いからってスライムを素手で触ろうとするな! シュシュ、お前もだ!」
「アオ君、こんなに可愛いのにダメなのですか?」
「そうですよ」
「ハァ? 可愛くても魔物は魔物だ! スライスは可愛いが、どんなモノでも溶かす危険な魔物なんだ!」
「「きゃぁー!」」
こんな調子の3人を、スズとチロちゃんは斧と小型ナイフを使い、簡単にスライムを倒しながら笑ってみている。
「おい! スズ、チロ、笑っていないで助けろぉ! カサンドラ、シュシュ、チョロチョロするなぁ!」
「アオは大変だな」
「アオにぃ、がんばれ!」
アオ君は困惑する。ほかの魔物もでる森の中で自由に動き回る2人に、20匹のスライムを倒せるのかと……。
「シュシュ、このお花かわいい」
「はい、お嬢様」
「カサンドラ! シュシュ!……全くお前たちは、ククク、ハハハーー! まったく、こんな冒険があるかよ!」
どこまでもマイペースすぎる2人。だが、楽しそうなのでいいかと、アオ君は笑った。
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