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「はあ?なに?結局、咲楽ちゃんの優しさに絆されて結婚したって言うの?」 助手席の亜美が白けた表情でガン見していた。 「そうだよ」 守の話したラブストーリーは、事実の半分。 「…呆れた。あんた、そんなチョロい男だったんだ」 料金所を通りすぎた車は、一般道に出た。 「恋におちる瞬間なんて案外そんなもんでしょ。自分が凹んでる時、寄り添う様な態度や肯定的な言葉かけられれば、グラッとくるでしょ? それが狙ったあざとさじゃなくナチュラルにだったら、そりゃ『この人、神!』てなる」 店に向かう道は混んでる。時計に目をやり幾分早口にまくし立てた。 「ふーん、エイトでも凹む時あるのね」  そういって亜美は交差点の信号に目線を移し、背もたれに沈みこんだ。 「まったく、俺をどう思ってるの!?」 「365日陽キャラ」 お互い前方を見たまま笑う。それから守は真面目な顔つきになり、 「自身の喜怒哀楽を置いといて、お客さんに楽しんでもらう。明るく元気に帰ってもらう様するのが仕事だよ。でも、あの時は世の中大惨事で、売上も何もあったもんじゃなかったでしょ。先行き不安で俺も人並みにメンタルやられてたさ」 と過去を振り返った。
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