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旅行に持っていく洋服の選別を終え、ソファでくつろぐ咲楽。ヒーリングミュージックをスマホで流し、カフェインレスのアイス珈琲を飲む。彼女が一日を締めくくる時間に、守が帰宅することはない。 この夏、猛暑と妊娠で、とにかく体が暑い。 アイス珈琲はキンキンに冷やしていたのに、グラス越し手の平の熱を吸収し、簡単に温くなってしまう。 心地よさと引き換えに、失う何か… 思案に耽る咲楽は、体を完全にソファの背へ預けた。守が譲らなかったデザイナー物、さすが寛ぎ感が半端ない。 「こんな豪華なマンションで子育て、私に出来るのかな〜」  咲楽は高い天井を見上げ呟く。 二人で新居を探した際、立地の良さと安心な防犯システム、加えて満足のいく間取りだったのは、ここだけだった。 「はぁ〜釣り合わない気がするなぁ」 近頃ホルモンの変化で、メンタルが落ちる時がある。生来の咲楽には無かった事だ。 守が惚れた心身共に元気な自分を取り戻そうと、意識的にリラックスして過ごす様にしているが、 「今夜も、可愛い子に囲まれてるのかな…」 卑屈モードが炸裂する。
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