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そうやって勝手に頭に血が上っていた守は急に脱力し、ポスンとハンドルに顎を乗っけた。 「まあ、しょうがないか」 咲楽の腹部を見て、にへっと笑う。 「咲楽、俺に愛されてるからな〜」 まだ目立ってないが、彼女のお腹の中には守の子がいる。妊娠するまでのアレコレを思い出し、守はニマニマが止まらない。 めくるめく愛妻との官能世界に機嫌を良くした彼は、平静を取り戻し腕時計を見た。 「ヤバッ!」 今夜は同伴で、常連客とドライブの約束をしていた。 高木咲楽は最近、自分でも幸せオーラが倍増してるのが分かる。穏やかな気持ちで接するから、相手も居心地よく空気が和らぐ。 以前は今思うと、些細な事がコンプレックスだった。 子ども相手の仕事なので、咲楽はネイルや香水をつけない。なのに交際相手から仄かに漂ってきたり。 自然とデート中、子供ウケするグッズや話題に関心がいくと、お子ちゃま過ぎると苦笑いされる。 見た目だって、他の女性より長身の身はハンデがあると感じていた。 口紅よりリップクリーム、ハイヒールよりスニーカーを常用し子供達と遊ぶ。 そんな自分の取り柄は、笑顔と健康だと考えていた。 だけど守が、 『好きだ』 『愛してる』 の言葉を沢山囁いてくれてからは、心が波立たなくなった。 最初その言葉達が信じられなかった。しかし『結婚』の二文字を彼が口にし始めるに至って、守の本気度が胸に染み込んだ。
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