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2話
ふわ、と正門(と思われる場所)前に着地する。
真白のお城に天使の羽の装飾、門にも羽の刻印があり、その両端にはカップケーキみたいなヘルメットを被って大きいフォークを持ったねこのぬいぐるみがいる。なんで?かわいい。
『むうちゃん、いこ!』
いつの間にか私の肩に乗っていたピィに言われるがまま、ピンクのカップケーキを被ったねこさんに話しかけた。
「あ、あの」
『なんですかニャ?……に、にんげん?!』
「ぉあ、えっはい人間です」
『ニャー!!たいへんだニャ!すぐおうじょさまにしらせニャいと!』
そう言ってねこさんたちはぽてぽてと慌ててお城の中に入っていってしまった。えっどうしたらいいんだ。
「ぴ、ピィ……これどうしたらいーの?」
『だいじょうぶ!まっていよう!』
「ほんとか……?」
まあ今は何したらいいかわからんから待つしかできない。変身を解き、なんとなく周りを見渡した。
淡い色味でカラフルな街並み、少し遠くの街っぽいとこに見えるのは大小様々な動くぬいぐるみたち……。本当に私は、魔法の世界に来てしまったのか。
しかし何故かぬいぐるみたちの中に見覚えがある子がいる、ような気がする。気のせいかな。
大人しく正門の前で待っていること数分。
ギイィ……と音を立て、門が開いた。
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「……なるほど、つまり、私にこの世界を救ってほしいと」
『ええ、話が早くて助かりますわ』
カップケーキねこさんたちに案内され、通されたのはたぶん謁見の間。その奥には、ふわふわの桃色ドレスを着た縦ロールヘアの綺麗な綺麗なビスクドールが、いかにも王女ですという椅子に腰かけて待っていた。
王女さまの話では、私は1000年に1度の魔法界の救世主?らしく、魔法界をおびやかす敵?と戦い、それをやっつける力があるらしい。
その証拠が、ピィと話ができたことやあの魔法のコンパクトを使えたことみたい。うん、わからん。
『ぜひ〈ココロカラット〉を集め、魔法少女たちを倒してほしいのです』
「ココロカラット……?」
『幸せなぬいぐるみたちのココロから生まれる宝石です。夢天使の力になるものですわ』
すごい。私女児向けアニメの主人公みたい。
「でも、魔法少女ってほんとに敵なんですか?なんかそういう存在って味方になってくれそうなもんだけど……」
『まあ!魔法少女は正真正銘敵ですわ。この世界に絶望をもたらすものたち……放っておくわけにはいきませんが、とても力が強く、わたくしたちは手も足も出ないのです』
「はあ……」
『そこで、むうさんに討伐をお願いしたいのです。むうさんの夢天使としての素晴らしい素質とココロカラットの力を合わせれば、きっと上手くいきますわ』
どうか、どうかお願いします。そう言って私に頭を下げる王女さま。ピィも私の肩で『むうちゃん、おねがい、おねがい』と鳴いている。かわいいけど耳元だから割とうるさい。
「まあ、私でいいならやってみますけど……」
『! 引き受けてくださるのね!ありがとう……!』
王女さまはぱあっと明るい顔になり、私の両手をぎゅぅと握った。とても、冷たい手だった。
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あれよあれよとコトが進んで、この世界に家のない私はお城の近くのおうちをあてがってもらった。しかもお供としてぬいぐるみさんを2人…2匹?もつけてもらうことに。すごい高待遇で逆に申し訳ない。
『むうちゃん、これからがんばろうねえ!』
「うん……うん、そーだね」
消えてもいいと思ってた命だ。ここまできたら最期くらいなんか役に立ちたいって思うのも、悪くないよね。
おうちもふたりのぬいぐるみに案内させるから待っていて、と王女さまに言われたのでお城の入り口でまたぼんやり待つこと数分。ギイ、と扉が開き、ふたつの影がとてとて現れた。
『夢天使さま、はじめまして』
『おれたち、夢天使さまのおそばにいることをゆるされたぬいぐるみです』
ひとりは桃色のうさぎさん、ひとりは純白のくまさん。うやうやしくお辞儀をするそのぬいぐるみたちにも、なんだか見覚えがあるような気がした。
『……なーんて!』
ぱっと、うさぎさんがすぐに顔をあげた。
『あたしカタくるしいのキライなんだよねー!これからよろしくっ、ね、ね、むうちゃんってよんでいい?!』
めっちゃぐいぐいくる。動くたびに左耳の赤いリボンがひらひら揺れている。とてもかわいい。
『ああ、ずるい、おれもなかよくなりたいのにい……あの、おれも、むうちゃんってよびたいなあ』
くまさんの方も顔をあげて、私の方に近寄ってくる。もじもじと首元につけた赤いリボンをいじる姿がとてもかわいい。
「ん、好きに呼んで。よろしくね……ええと、ふたりの名前は?」
『あたしたち、ナマエないの!』
『うん、だから、むうちゃんにつけてほしいなあ』
「え、」
名前ないんだ。王女さま、呼び分けとかどうしてるんだろう。なんかすごい王女パワーとか使ってるのかな。
「んじゃー……うさぎさんだからうーちゃん、と、くまさんだから……くうくん、で。どーかな」
『うーちゃん……!ステキ!うれしい!』
『おれ、くうくん、くうくん。えへへ、ありがとう、むうちゃん』
「ん。よろしくね、うーちゃん、くうくん」
ニコニコ笑いながら私の周りをくるくる回るふたり。かわいいね。癒される。癒されるけど、
「ね、早速なんだけど……色々あって疲れたから、横になりたい、かも……」
『わー!ゴメンね!さっそくおうちにいこう!』
『いこう、いこう、こっちだよお、おれについてきてえ』
『むうちゃん、しっかりー!』
くうくんが前をぽてぽて走って、うーちゃんが背中をぽふぽふ押してくれている。かわいい。幸せだ……夢かな……いや、わかんない、けど、今は眠りたい……
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