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子どもとの記憶(回顧録)
ひとりでお腹を痛め、畜生だって自力でお産するんだぞと言い聞かせ、太陽が登る頃、息子は産声を上げた。意味のない、ただ生きていると伝えてくれるその泣き声に涙が止まらなかった。
私の子どもであるにも関わらず、父親の顔も見たことがないにも関わらず、産まれた男の子は鈍感で健康で純粋で可愛かった。この子のことは愛せると思った。
夜泣きする子であったがそれが嬉しくて寝不足も気にならなかった。
近くの人は私が引っ越してきても噂もせず、ひっそりと住ませてくれた。誰も住んでいなかった祖父母の家には小さいながら畑もあり、そこでちょっとした野菜を育てながら暮らした。人が少ないこの町でもヘッドホンは手放せなかったが、それでも私は息子と二人でひっそりと暮らすことができた。
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