子どもとの記憶(回顧録)

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 ある夜のことだ。息子は熱を出した。今までにない高熱だった。私は手を尽くし、それでも熱は引かず、どうしようもなくなり、私は車を飛ばして町の病院へと向かった。  当直の医師と看護婦は私の子どもを懸命に治療してくれた。私は子供の名前を聞かれて、しばし黙ったあと、のぞみと答えた。保健証は慌ててしまって忘れたと嘘をついた。幸い、看護婦たちはその場では何も言わず引き続き治療にあたってくれた。  病院のベッドで眠りにつく息子の手を握ったまま、私はそこで眠りに落ちていた。
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