病院に向かう

1/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

病院に向かう

 母は僕がものごころつく頃には突然いなくなった。 「あなたのお母さんはちょっと変だったのよ。」  祖父母はそう言って母のことを大して話してくれなかった。父は居なかった。  だから僕は独力で母のことを知ろうとした。覚えていることはすべて記録に残し、母の遺したものから人伝で聞けることをすべて聞き出し、いつ母とまた出会えるのかも分からないのに、母のことを考え続けた。  高校卒業をしてすぐに働きに出た。幸い職場の仲間に恵まれて、成人したときには貯金もそれなりに貯められるぐらいにはなった。そして、いつか来る日を夢見ていた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!