この手紙をキミへ

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ちょうど今から一年前の冬。 私は放課後にひとりで大量の手紙の仕分け作業に悪戦苦闘していた。 「ふう……今日も多いなぁ……」 小さくため息を吐き出したと共に図書館の引き戸がガラリと開き、配達終えた同じクラスの瀬戸莉可(せとりか)が両手に手紙を抱えて入って来る。 「野乃花(ののか)―、今日も図書館前の投函ボックスに手紙たくさん届いてたよ」 「あ!ありがと、梨可ちゃん、昨日月曜日だったから先週の金曜日の分と合わせて手紙が多くてやっぱ回収できてなくて助かったよ」 私は手紙たちを仕分けしていた手を止めた。 「そりゃそうだよ、この卒業シーズンは特に三年生のお目当ての先輩との手紙のやり取り増えるからね。それに伴ってカップル成立も多くて廊下歩いてるだけで目の毒―」 テニス部と、この『手紙部』を掛け持ちしてくれている梨可がげんなりとした顔を見せる。 「あはは、莉可ちゃん凄い顔」 冬でもやや日焼けした顔で莉可も笑う。 「それにしてもさ、手紙部ってアタシと野乃花の二人でしょ? うちの学校の生徒が他校より少ないと言っても三百人はいるんだからさ、投函後三日以内に配達しますってのやめない? 」 「だめだよー、うちの高校に創立以来からある由緒正しき部活動が野球部とこの手紙部なんだから」 私は今日配達する手紙たちに、今日の日付の入った消印スタンプを左上に押していく。 「ねぇ、野乃花のおばあちゃんも手紙部だったんだっけ? 」 「うん。おばあちゃんと野球部だった、おじいちゃんは手紙のやり取りがきっかけで付き合って結婚したんだって」 莉可が腕組みして天井を見上げる。 「もしかしたら手紙のやり取りをきっかけに未来の旦那さまと出会えるのかもしれないってことか? 」 「だね」 「とりあえず誰かあたしに手紙くれないかなー、あ、もし今日の手紙の中にあたし宛のがあったら速攻LINEして。じゃあテニスがんばってきまーす」 敬礼ポーズを取りながら図書館をあとにする莉可に、私も笑いながら敬礼ポーズをした。 扉が閉まれば誰もいない図書館は静かで、隣接する運動場からの野球部の掛け声が小さく聞こえてくる。
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