この手紙をキミへ

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それから十日が過ぎた。初めの一週間は今日こそはと莉可とふたりして投函ボックスを目を皿のようにして覗いていたが結局『この手紙をキミへ』と書かれた手紙も君江の名前が記載された手紙も投函されることはなかった。 「さてと、かえろっかな」 私は本日の手紙の配達を終えると鞄に筆記用具を仕舞う。スマホで時間を確認すれば十時八時五分前だ。 (もうすぐ蛍の光が流れるな) ──カサッ……。  誰もいない図書館に小さく音が響いた。何度も聞いたことがある、木製の投函ボックスに投函する際手紙のこすれる音だった。いつもなら気にしない。放課後、仕分け中に投函にくる生徒もいるからだ。しかしもうすぐ校内放送が流れるこの時間に手紙を投函しに来る生徒は滅多に居ない。 私はすぐにあの手紙のことが頭をよぎり、すぐに視線を図書館扉へと向けると、すりガラス越しに男の子が立ち去るのが見えた。私がすぐに図書館扉を開け放つと薄暗い廊下をユニフォーム姿の男の子が走り去っていく姿が小さく見えた。 (野球部……?) そしてすぐに投函ボックスに目を遣れば回収して空っぽだったはずの投函ボックスには手紙が一通入っている。 (やっぱり!さっきの男の子がいれた手紙だ) ──あて先は『この手紙をキミへ』 私はその手紙を鞄に仕舞うと急いで祖母に会いに向かった。
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