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 ついにこの日がやってきた! 久しぶりのオフでのイベント! リアルなイベント!  頒布物は宅配搬入されているから、ラクチン。サークルチケットを見せて、先行入場して、設営だ。  頒布物が多いから机に乗り切らない。お品書き一覧作ったから、これを置くだけでわかるだろ。見りゃだいたいわかるわかる!  設営できたから、早速ブース撮影。 「設営完了しました。し-27でお待ちしてます。きれいなものたくさん置いてます」  イベント公式タグも付けて投稿! 右隣のサークルが挨拶してきたから、挨拶を返した。お菓子までくれたけど、私、これ嫌いなやつだ。帰りに駅で捨てようかな。  タイムラインでタグチェック。テキトーにシェアして拡散しておけば、向こうもしてくれるでしょ? マナーでしょ? 私の作品は絶対面白いからもっと広まるべき。  左隣は共通フォロワーもいない人だ。設営に必死そうだし、挨拶必要無しと判断!  開場のアナウンスが響く。マイクが少しハウリングして、頭にガンガン響いた。大扉から次々に一般参加者が入場してくる。これから6時間、久しぶりのリアルイベント楽しむぞー! 「こんにちはー! 月宮(つきみや)夜空(よぞら)さんですか?」 「は、はい! 私です!」 「お会いできて嬉しいです。フォロー頂いてる城野(しろの)です。これ、差し入れです」 「ありがとうございます!」  共通フォロワーの多い城野さんが来た。よくイラストを投稿してる人だ。私もいいねするし、されたこともある。 「それでは、私、鮫島(さめじま)さんのスペースでお手伝いしているので、良かったら来てくださいね」  は? 何それ? うちの作品を何も買わずに差し入れ渡しに来たの? しかも私が嫌いなお菓子だし。正直いらねぇ。あと、鮫島さんって誰? 私のフォロワーでもないが?  私は差し入れ準備してなかったし、これを別の袋に入れて配ろうかな……。そのほうが捨てるよりもエコじゃね? さっき貰ったお隣の菓子と合わせたら、豪華に見えるし。  一般参加者はお目当てのサークルから回るはずだし、私のところにもそろそろ来るかな……。  タイムラインをチェックしていると、目の前に人影。お客さんか! と思ったら、左隣のサークルで購入していた。 「ミチル。お隣に挨拶した?」 「設営に必死でしてなかった!」 「はぁ……。すみません。挨拶遅れました。お隣にお邪魔します。2人でサークル活動しています。『レバニラ定食』です。こっちはイラスト担当の佐野(さの)ミチル。私は文章担当の美谷島(みやじま)ヒカリです。名刺と無配どうぞ」 「あ、ありがとうございます。私は個人で絵文両刀で活動している月宮夜空です」  名刺と無配を受け取ったので、私も名刺を渡す。  2人の名刺はキラキラの特殊紙に印刷されたもので、イラストとショートストーリーが入っていた。これ良いな。今の名刺が切れたら真似しようかな。  何か話そうと思ったら、隣のサークルに人が来た。接客で忙しそうだ。  私のほうがもっと綺麗なイラストも描くし、文章も書いてるってのに、人が来ない。イベント前通販でも新刊予約入らなかったし、わけわからん。  右隣にも人が来ている。しかも全種類一冊ずつくださいという声が聞こえてきた。固定ファンがいると強いな。羨ましい。  私はこの日のために原画も準備したってのに、まだ見る人がいない。そろそろ買いに来いよ、フォロワー! 「あ、月宮さん! お久しぶりです! 谷垣(たにがき)です!」 「谷垣さーん! お久しぶりです!」  フォロワーの谷垣さんだ。いつも投稿にいいねをくれる。  見本誌を手に取ってパラパラ流し読みしてるから、買うか? 買うよな? フォロワーだもんな? 「月宮さん、あの、この本……」 「はい、500円です!」 「あ、す、すみません! この本、隠しノンブルですか?」 「へ?」 「ページ番号埋まってますけど」 「し、仕様です!」  うわぁ、ミスってた! 最悪! 何でイベント会場でそういうこと言ってくるかなぁ。お隣にも聞こえてるし、恥晒しなだけじゃん! やめてくれよ、まったく。 「あと、これ、グラッセは焼かないですよ……」 「はい?」 「グラッセは、煮る料理だから……えーっと……あはは」  何それ。わざわざ私をバカにしに来たってこと? 苦笑いをして見本誌を置いて、谷垣さんは去って行った。腹立つ!  
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