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リビングに戻ると、ソファーに座って望くんは誰かと通話中。
「はい、絶対に。え? 当たり前じゃないですか! いや、そんなの関係ないですから。また、決意が固まったら会いに行きますね。夜分にすみません。どうしても、今言いたくて。はい、じゃあ、失礼します」
大きなため息を吐き出した望くんに、あたしはタオルでまだ乾き切っていない髪を拭きながら、冷蔵庫から取り出してきた冷えたビールを渡す。
「はい」
「わっ! びっくりした」
「ふふ、なにそんなに慌てて」
「いや、別に。ってか、これ、飲む前に」
自分の分と、あたしの手にしていたビールの缶まで取り上げられて、何もなくなった両手を握りしめられた。
「……望くん?」
「たぶん、来年には上に上がれるんだ。さっき、冴島さんに今のポジションを任せたいって言われて」
「……え!? いきなり?」
「いや、実智ちゃんからみたらいきなりかもしれないけど、俺けっこう頑張ってるんだよ? 見えないとこで。まぁ、自分で言っても説得力ないかもだけど。
そしたらさ、俺堂々と実智ちゃんの両親に挨拶に行けるから。だから、今すぐは無理だけど、あと少し。
冬が終わって春が来るまで、もう少し頑張るから、そしたら、その時は改めて言わせてください。大好きな実智ちゃんに、俺の最大級の愛の言葉」
付けっぱなしにしていたテレビ。低い音量で流れてくるメロディは、切なくて甘いラブバラード。狙って歌い始めたんじゃないかと思うくらいにタイミングよく聞こえてきたその音に、気持ちがさらに高まる。
望くんとの夜は尽きることが無くて。
あたしの体力なんてお構いなしに愛される。
だけど、ちゃんと優しくて、愛おしくて。
朝が来なければ、ずっと続けば、なんて望んでしまう自分がいる。
大人になれていないのは、望くんだけじゃない。
大人なふりをしているあたしよりも、きっとずっと、望くんはすべてを分かっている。
絡まる指。
繋がる全てを、望くんに捧げる。
もう大丈夫。
あたしは望くんとずっとずっと、一緒にいたい。
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