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寛人が親しげに話しているけれど、いったいなに繋がりなんだろう?
「望くんね、実智に会うの楽しみにしてたんだって」
「……え?」
「寛人の会社に今年入った新人くんでね、今日実智のこと誘ってほしいって望くんに頼まれたらしいよ? 知り合いにこんな可愛い子いるなんて聞いてないしー」
は? なにそれ?
その前に、あたしは完全に〝はじめまして〟なんだけど。え? あたしのこと、知ってる?
「また会えて嬉しいよ。実智ちゃんっ」
困惑していると、望くんがニコッと微笑んだ。なんだその笑顔、天使か!?
隣で終始ご機嫌な望くんの事が、やっぱり思い出せないでいた。
お店を出てからも、当たり前の様に望くんはあたしの横にずっといる。
「じゃあ実智またねっ!」
「え、あ、うん。また」
友香は寛人と二人で煌めく繁華街へと消えて行った。
あれ? これって、二人きりじゃない?
「……じゃ、じゃあ、あたしも……」
頭を下げて歩き出そうとしたら、腕を掴まれた。
「送ってく」
「……え」
「と、言うか、送らせてください」
ペコンっと頭を下げたかと思うと、不安気に顔を覗き見てくるから、そんな望くんの潤んだ瞳が可愛くて頷くしかない。
「やった。行こうっ」
ニパッと笑顔になって手を繋がれる。
第一印象よりもだいぶ可愛くて幼く見えるんだけど……酔っているから?
「あ、あの……望くんって、何歳なの?」
あたしよりもずっとずっと年下な気がしてきた。
「……それって、言わないとダメ?」
「え……あー、別に、言いたくないなら」
女の人に年齢聞くのがアウトなように、男の人にも迂闊に聞いてはいけなかったのかも。
「……二十三」
ぽつり。呟くように言われて、あたしは耳を疑った。思わず繋がれていた手を離してしまう。
「え!? に、に、二十三!?」
「……うん」
思ったよりもずっとずっと若かった……。
「あー、ごめん。若いとは思ったけど、ほんと若いね」
あたしからじゃないけれど、手とか繋いじゃってごめん。心の中でとりあえず謝っとく。
「ねぇ、実智ちゃん。俺と付き合って」
「……は?」
え? 今なんて言った?
聞き違いだよね? なんの冗談。
望くんの緩んだ笑顔に思わず笑えてきてしまっていると、その顔が近づく。
あー、あたし、反射神経鈍ってる。
そう思った時にはもう遅くて、望くんの唇があたしの唇に吸い寄せられるようにくっ付いた。
避けれたはずなのになぁ。
キスなんていつぶりにしたんだろ。望くんの唇柔らか。
「オッケーってことでいいの?」
「え、」
いや、キスは受け入れちゃったけど、それはちょっと無理だ。
もう一度近づいてきた望くんの口元を両掌で塞ぐ。
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