1.再会、溺れる夜

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 初対面で大人っぽくて、真面目な印象を受けたと思ったら、無邪気な笑顔に幼さを感じた。キスをする顔は色気があって、家に連れ込めば怒られる。  なんだかやばい人じゃないよね?  やっぱり帰ってもらおう。って、無理かもしれないけど、その時はその時で受け入れるとして、とりあえず帰ってもらえるか聞こう。 「ごめん、望くん。やっぱり望くんとは付き合えないし、うちにあげちゃったり、シャワー貸したりして、その気になっちゃってるかもだけど、あたしよりも若くて可愛い子の方が断然いいと思うから、だから、どうか今日のところはお引き取りください……ません、か?」  あたしは正座をして、バスタオルを腰に巻いたままの望くんに頭を下げた。 「……俺の方こそ突然上がり込んで、ごめん」 「……え」  やだ、素直で可愛いんだけど。  目の前で膝をついてシュンとしてしまう望くんに罪悪感を感じる。が、その前に、無駄な色気を漂わせていて目のやり場に困る。 「って、素直に帰るとでも思った?」  は?!  覗き込む笑顔のその目は笑っていない。  ですよね。分かっていました。 「シャワーで少し酔い覚めて、いきなり家に上がり込むとかやばいなって反省してたんだけどさ、さっきの曲。俺にはアウトなんだよね。なんであれかけたの? 煽ってんの?」  どんどん詰め寄ってくる望くんにあたしは訳が分からずに組み敷かれる。 「な、何言って……」  最近部屋で音楽とか聞いていなかったし、たまたまこの前思い出して聞いてみたら懐かしくて、それを付けただけだったのに。  なんでこの曲が望くんにとってアウトなのかも、意味がわからない。  このバンド、当時は売れに売れたけど、今となっては知る人ぞ知るだと思うんだけど? しかもこの曲はそこまでメジャーな曲じゃないし、知らない人は知らない曲だよ? なんで知っているの? 「ベッドで待ってるから、実智ちゃんもシャワー浴びてきて」  耳元で囁かれて、体が震えた。 「……あ、よかったらそこにスウェットある……」  指差した先に、置きっぽなしにしていた元カレにあげるはずだった新品のスウェット。 「……ありがとぉ」  思い切り眉間に皺を寄せて不服そうな表情でお礼を言われた。  見上げた望くんは水が滴ってより色気を纏う。眉をさらに顰めたかと思うと、小さくため息をついてあたしから離れた。 「やっぱ帰るわ、俺」 「……え?」 「いきなり押しかけてごめん。お願いだからさ……嫌いにならないでね」  また脱衣所に消えてしまった望くんに唖然としつつ、スーツ姿に戻った望くんはあっさりと「またね」と帰ってしまった。  一人取り残されたあたしは、なんだか孤独感を感じる。 「……はぁ。でも良かったよ、初対面の若い男の子と一夜の過ちとか。あり得ない。忘れよう」  冷蔵庫から缶ビールを取り出して飲み直すことにした。
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