実は○○なんです!

2/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
トイレは1つしかなかったため、何度か戸をノックされた。本当に申し訳ないが、途中で出るわけにもいかずノックを返して座り続けた。この病気のせいで、特に外のトイレでは迷惑をかけてばかり。でもなかなか治らない。 コンビニ内を探すが、遥子先輩の姿は見えない。さすがに怒って車内へ戻ってしまったか。 僕はコンビニの駐車場に停めてある営業車の運転席に、険しい顔つきをした遥子先輩を見つけた。まずい、叱られる…。覚悟しなきゃ……。 助手席のドアを開けるなり、僕はすぐさま先輩に謝った。 「楠木先輩、お待たせしてす、すみません。お腹を下していて時間がかかってしまいました。仕事に支障が出てしまい、その…」 「言い訳はいいから早く座って」 「い、いえ、決して言い訳ではなくて…」 「あなた何分トイレに入ってた?」 「さ、35分です…」 「そうよね、時間かかり過ぎよね。次もまだアポイントがあるのわかってる?私だけじゃなくて、お客様を待たせてるのよ?」 「はい、それはもちろん。これでも早く出たつもりなんですが、思ったより"処理"に手こずって、その……」 僕はカンカンに怒る先輩の目を見れず、恥ずかしそうに視線を下に落として頭を()いた。 「本当はトイレでスマホいじってたんじゃないの?ソーシャルゲームとかさ。他の部署でも、"モンスター新人"がやってたらしいし」 「絶対にそんなことはしてませんよ。先輩、そういうあらぬ疑いをかけるの、よくないですよ」 穏和な僕も、先輩の安易な発想には頭がきて、やんわりと反論した。 「どうだかね。とにかくもう少し早く出なさいよ。せめて15分とか」 「そ、そのことなんですが。じ、実は……」 サボっていたと疑われているこの悪い流れを逆に味方につけ、ついに僕はもう隠せまいと、自分の持病を打ち明けることに決めた。 「実は僕、か、なんです!」 大きく目を見開き、先輩の目を見ながらはっきりとした口調でそう"告白(カミングアウト)"した。 それを聞いた先輩は一瞬沈黙したが、すぐに聞き返してきた。 「過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)!?何その長い名前。腸の病気とか?」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!