実は○○なんです!

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「正確には腸自体の異常ではなく、不安や緊張などの精神的ストレスが要因で腹痛を頻繁に起こし、下痢などの辛い症状が出る病気です。下痢型は僕のような若い男性に多く、便秘型は女性に多いそうですね。僕の場合は、便が断続的に出てしまって残便感が収まらず、つい時間を要してしまうんです。拭く作業も大変で、何回もトイレットペーパーを使ってしまいますし。奥までねじ込ませると、しつこい便がまだ付着してるんですよ。それをきれいに拭き取らないと気が済まなくて…あ、すみません、こんな汚い話して」 僕は悩みの種である持病の過敏性腸症候群について、初めて家族以外の他人に語った。それがすごく嬉しくて、余計な下品なネタまでしゃべってしまったが(笑)。 遥子先輩は笑いを(こら)えきれずに、爆笑して僕の肩を叩いた。 「ププ、そんなデリケートな事情までオープンにしなくていいのに、マジウケる!あ、ごめん笑っちゃいけないよね。ちゃんとした病気なんだし。なるほど、そういえば堂島くん、会社でもよくトイレ行ってたっけ。ゲームやってたなんて疑ってごめんね。ちゃんと告白してくれてありがとう」 「いえいえ。こちらこそすみません、長い時間待たせてしまって。さあ、次の得意先に急ぎましょう」 「そうだね。でもその病気のこと、会社や課長には伝えてないんでしょ?」 「は、はい、実はまだ…。就活でも不利になるとか考えてたし、いざとなると恥ずかしくて言えないんですよね」 「じゃあさ、私と一緒に言おうよ。課長にもちゃんと事情を知ってもらっておけばさ、今後一緒に営業行ってもわかってもらえるじゃん?」 「そうですね。先輩がついているなら…。ありがとうございます、お気遣いいただいて」 あんなに怒っていた遥子先輩は、勇気を出して病気をカミングアウトした後、打って変わって優しい対応に戻ってくれた。 お姉さんのような頼りになる、尊敬できる先輩。でも子供っぽい無邪気な部分もあって、そのギャップが好き。 この勢いで、危うく"愛の告白"までしてしまいそうになる。 まあ、しないけど。
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