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前向きな思考
2週間後、4月下旬。
気候はだいぶ暖かくなり、過ごしやすい季節になった。
営業研修は無事終了し、課長にも持病のことを伝え、意外にも素直に受け入れてもらえた。遥子先輩のサポートのおかげで。
昼休み。
僕は食堂で遥子先輩と昼食のバイキングをとっていた。席に座り、会話をする。
「それで最近どうなの?お腹の具合は」
「まだまだですかね、僕この病気と付き合い長いんで。でも少し、トイレに行く回数減りましたよ。あとかかる時間も短縮できてきました」
「あら、良かったじゃない。やっぱり隠さず大っぴらにした方が、精神的にも安心よね」
「ええ。先輩のおかげです」
「どういたしまして。それはそうとさ、恥ずかしい話だからちょっと耳貸して」
「え?は、はい」
突然向かいの席の僕を呼び止め、先輩は僕の右耳に小声で囁いた。
「キミが過敏性腸症候群だったって打ち明けてくれた時ね、その、お尻を何回も拭く話をしてたじゃない?」
「ええ」
「その時ね、なぜか"う○こドリル"のこと思い出しちゃったの。ほら、本屋に売ってる小学生とかが使うヤツ」
「あー、あれかぁ。ははは、先輩も面白いですねえ。どうです?仕事終わりに一緒に本屋に行きませんか?」
「いいねー。私買いたかった雑誌あったんだ」
「僕も営業のスキルアップの本探さなきゃ」
最近では遥子先輩と、こんな何気ない日常会話を楽しめるようになってきた。
僕を苦しめている、過敏性腸症候群という病。なかなか完治は難しいが、服薬治療や食事の改善、適度な運動などで症状を緩和させることはできるようだ。
近年ではこの病気の患者も増えているらしい。特に環境が変わり、過度なストレスがかかりやすい新入社員は要注意だ。
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