二日目

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 「うわぁ!」 「きゃ……っ!」  次に視界が開けた時、二人は見知らぬ屋敷の玄関ホール前で尻餅を着いていた。空間転移のせいか、視界が回る感覚がする。 「此処は……一体?」 「わからない」  イクスは素早く立ち上がると、周囲を警戒する。しんと静まりかえった屋敷内は、人の気配がしない。幾つかの建物と回廊が存在しているようだ。  慎重に玄関に入ってみる。  すると、正面にある大階段の先に、先程の男が立っていた。 「ようこそ、僕の屋敷へ」  イクスはララを庇うようにして身構える。 「無理矢理連れてきておいて、何がようこそだ」 「ちゃんと許可は取った筈ですよ。『何処であろうと』、何があっても変わらない愛の証とやらを見せて下さいと。ならば僕の屋敷であっても変わらないでしょう」  イクスは思わず口を噤む。詐欺のような揚げ足拾いとは言え、契約は成立してしまっていたのだ。これは転移魔法を解くのが難しくなってきた。  イクスは小声で問う。 「ララ、此処から脱出できる算段はあるか?」  ララは少し考えた後、左右に首を振った。 「本来、他人の住居に入るのは、とても難しい事なんです。プレイヤーキル防止の為に防護プログラムが働いていますから。しかし従来の転移魔法でこうして私達を招き入れる事が出来ているということは、彼は不法に運営システムに侵入しているのかもしれません」  エルラドではプレイヤーキルは禁止されている。ゲームではあるがそのリアリティの為に、本当に死んだと錯覚して意識に危険が伴いかねないからだ。  だが相手は違法なラインを平気で超えてくる男である。イクスとララに危害を加えてくる可能性が高い。  幸いにも先程街中で騒ぎが起きて大勢の目撃者がいる。顔見知りではないので少し不安は残るが、彼等が通報して運営が助けてくれるのを待つしかない。  イクスにも察しが付いたようで、ギリッと歯を食いしばった。 「くそ……っ」  男を見上げて声を張る。 「俺達を此処に連れてきて、何が目的だ」 「貴方方には実験に付き合ってもらいます」  実験……?と首を傾げる暇もなかった。  突如、ララが電流を浴び始めたのだ。        
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