二日目

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 イクスは駆け、部屋に入り、また駆ける。  また新たな部屋に入る。この屋敷はどうやら客室が多いようで、貴族の城を思わせた。   ベッド、化粧台、椅子、テーブル、本棚、机……急ぎながらも徹底的に探すが、殆どがもぬけの殻だ。  次の部屋に移ろうと扉の近くに耳をすませる。すると、丁度追いかけてきていたのか一つの足音が聞こえ、一気に緊張感が走った。  廊下で立てられる音は、立ち並ぶ部屋を吟味するかのように暫く迷っていたようだが、やがて少し離れた扉を開け、入室したようだった。  今の内だ。イクスが音を立てないよう扉を開けた時――  廊下に立つララと、目が合った。 「――!!」  イクスは瞬時に駆け出す。背後から連なるように乱暴な足音が響いた。  愚かな獲物が罠に掛かるのを待つように。別の部屋に入室した振りをして、廊下で張っていたのだ。  鎧が重い。イクスはゲームウインドウでコマンド入力し鎧の装備を外すと、全速力で足を進め角を曲がった。  適当な広い部屋へと入り込む。  イクスは、思わず息を呑んだ。  その部屋は、床から壁に至るまで、全てが鏡で出来ていた。大量の壁があり、まるで迷路のようだ。 「一体、なんでこんな場所が……」   呟きながらも進んでいく。すると、少ししてイクスが入ってきた扉が開かれた。  ララだ。  お互いの姿は視認できるが、四方が鏡に覆われているせいで、本人の元にたどり着けない。ララはもどかしさを感じて呻くと、太ももに装着していた短剣を振りかざし始めた。  がしゃん、がしゃんと鏡は一枚ずつ割れていく。すると、どこからともなく声がした。 「面白いでしょう、その部屋。捕まりそうになった時の救済措置としてホールを改造してみたんですけど、上手く作用しましたね」  悪意の籠もった笑い声が放送のように聞こえる。何が救済措置だとイクスは憤る。奴ら、この鬼ごっこを楽しんでいやがると唾を吐き付けたくなった。  理性を無くしたララは一枚ずつ鏡を割っているせいか進行も遅くなり、イクスはララよりも早く無事に鏡部屋を脱出した。
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