二日目

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 ゲーム。プログラム。  ずくり。胸に痛みが走る。鈍く刺してくるそれを、心臓ごと削ぎ取ってしまいたい衝動に駆られた。  面布の青年の罵声は止まらない。 「プレイヤー補助プログラムに恋人ごっこなんかさせて。貴方自身も異常ですよ、頭がおかしいんだ!」  声を荒げた応酬に、周囲がざわつき始める。 「おいあんた等、さっきから何を揉めてるんだ。冷静になれ」 「うるさい、外野は黙ってろ」  偶々居合わせた男性に肩を掴まれるも、面布の男はすげなく振り払う。  胸の痛みは取れないが、兎に角このままではいけない。  この男は関わってはいけない人種だ。相手の為だ何だと言いながら、自分の主張を押し通そうとしている。  とにかくすぐに離れなくては。声が震えるのを必死で隠す。 「そうですね、俺達はそれでも構いません。頭がおかしかろうと最後まで二人仲良く過ごします。話は終わりましたね、それでは」 「待って下さい、まだ話は終わってませんよ!」  イクス達が立ち去ろうとすると、ずっと黙っていた水色髪の男が立ち塞がってきた。面布の青年は酷く興奮した様子で捲し立てる。 「二人仲良く過ごす?そいつらは刷り込みで貴方に懐いてるように見せているだけですよ。関係が円滑になるよう媚びを売っているんです。人間とNPCで、そんな事出来ると思ってるんですか」 「出来ますよ。今までもそうしてきました」 「何があってもパートナーに向ける愛は変わらないと?」 「……変わりません。俺はララが好きです」 「私も、イクスさんを愛しています」  そうだ。例え生まれも育ちも種族も違おうと、愛し合っている事には変わらない。それを否定する事はこの男であろうが、誰であろうが、出来ない。  男はケタケタと笑い出し、舞台役者のように両手を大きく広げてみせた。 「そこまで言うなら見せて下さいよ!何処であろうと、何があっても変わらない愛とやらの証拠を!」 「いいですよ、見せてやる!貴方がどうしようと、俺達の信頼は絶対に揺るぎませんから!」  売り言葉に買い言葉だった。一度は取り乱したものの、冷静さを取り戻していた筈のイクスは、いつの間にか面布の男に乗せられて再度頭に血が上りきっていた。  男の口角がぐにゃりと歪な三日月を作った。 「……言いましたね?その言葉、後悔しないといいですね。――発動!」  突如周囲が鈍い光に包まれる。この光は、イクスがエルラドにログインする時の光に似ている。しかし、普段は黄色の筈だ。  ならば、今薄緑の光を放つこの光は―― 「――空間転移魔法!?」 「おい、何をするつもりだ!?」  周囲の人々が騒ぎ始めた。喧嘩の最中だというのに空間転移をさせられている事に、唯ならぬ気配を感じたのだろう。  イクスとララ、面布と水色髪の男達は、その場から跡形もなく姿を消した。  
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