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やっぱりメロンパンは甘すぎた。
それと同時に以前にこれを食べた時のことを思い出す。
それは凛が転校してくる1週間前のことだった。
「甘すぎるなこれ」
俺は非日常のメロンパンを食べながら梨畑の近くを歩いていた。
引っ越しの話を聞かされた俺は空も山も見ずに足下だけを見ていた。
するとそれに出会った。
そこには落ちている梨に一匹の蟻が噛み付いており、どうやらその遥かに大きな梨を巣に持ち帰ろうとしていたのだ。それは蟻一匹にはあまりにも無謀すぎた。
「お前それ無理だろ。メロンパンやるから諦めろ。」
俺はメロンパンを小さく千切りその蟻の目の前に落とすと、その蟻はすぐにメロンパンに噛みつき勢いよく持ち上げた。
しかしその蟻は触角が1本しかなく思うように進む事ができなかった。1匹で梨に辿り着いたのもきっとそのせいだろう。
「仕方ないやつだなぁ。そのまま噛み付いとけよ。」
俺はメロンパンの端を掴むと近くの蟻の行列を辿って巣の近くへと運んでやった。
「ほら、あとは自分で頑張れよ。」
その後は梨を拾い上げ、手で土を落とすと近くで収穫をしていたおじさんに渡しにいった。その梨はまだ綺麗で地面で腐るには勿体無いと思ったからだ。
ただそれだけの事を思い出した。
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