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紡ぐのは最も得意な風属性。感知魔法は慣れていないが、術式も手に取るように呼び起こせるため難はない。
(……空からは見つからなかった、か)
数秒操作を止めた後に、土属性の感知魔法も合わせる。術式と術式を組み合わせた即席の複合魔法を丁寧に組み上げて、緑色と茶色を一対に含んだ魔法陣を完成させた。
「……凄いね」
「ふふ、玲のおかげだよ」
如月が何をしたのかを理解した神代の素直で端的な賞賛に謙遜で返す。見た目はどうあれ、問題は性能だ。気合を込めて唱える。
「【風珠の鈴音】」
その刹那、魔法陣が弾けて魔力が一気に拡散した。壁を乗り越えて、森や地中を吹き抜けて索敵を開始する。
「……感知魔法って、あんまり仕組み分からないけど……その、宝物とかも探せるの?」
「感知魔法は大まかに2つ。物体を感知するか、魔力を感知するか。凄い人の凄い魔法は、大都市1つの隅々まで地形とか人の位置が分かるとか」
「ほ、本当!?」
「ん。でもって、舞花が使ってるのは魔力感知の方。宝物が特別な魔力を持ってたら、それを察知出来る」
神代のサラッとした解説に月島が歓声を上げる間にも、感知の風は勢い留まることなく広がっていく。生い茂る木々や広がる大地が含む微力な魔力から、生息する魔獣の強靭な魔力まで。急激な情報量が流れ込むにも拘らず、頭の処理は悲鳴を上げずにさらに先へ。
(……ここまで、なんて)
その恐ろしさを噛み締めながらも、感知を進めると異質の魔力が引っ掛かった。生体のものではない無機質さに満ちた、忘れようのない魔力が人型を模っている。
「どうかした?」
「……やっぱり魔鋼兵がまだいるみたい」
如月の僅かに強張った空気を嗅ぎ取った水沢が尋ねた。それに簡単に答えつつ、魔鋼兵の動きを注視すると森の中をゆっくりと闊歩していた。
一定の速度を保ったまま見張るように巡回する動きは、まるで治安維持でも図る衛兵のように。周囲の魔獣はその異物を半ば受け入れているのか、怯えて身を潜ませている。
「邪魔をしないように巡回してる。迂闊には手を出せないかな……」
「それはどうにでもなるでしょ」
息を呑んで極めて警戒心に満ちた声音を、バッサリと両断された。思わず感知から意識を離して水沢の顔を見やる。
「焔が破壊出来たなら別に無敵じゃない。それなら分かってれば戦いようはある」
腕を組んだ堂々たる様が、一片の疑いを持っていない持論に宿る。そうして、水沢はフードの影に隠れた水色の瞳で如月を射抜いた。
「むしろ、現時点で言えば好都合って思っておきなさい。案の定、何かあるとしたらこっちだって分かったんだから」
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