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子どもたちが小さかった頃。
節分の日には、必ず両親が恵方巻を持って訪れてくれた。
激務で深夜帰りが続いていたパパに代わり
父が鬼の面をかぶって、みんなで豆まきをした
「鬼は~そと~。鬼は~そと~」と
子どもたちは口々に叫んで、庭先に立つ父に向って
嬉しそうに豆を投げた。
「がお~。鬼だぞ~」と父が両手をあげると
「キャー」と大声で叫んで逃げまわるのだ。
ひとしきり豆を外に投げて遊んだあとは、
大急ぎで窓を閉め、小さな声で
「福は~うち~。福は~うち~」と言いながら
少しだけ豆を部屋にまく。
「あまり盛大にまくと後片付けが大変だからね」
母が「じゃ、歳の数だけ豆を拾って食べようか」
と言うと、
「みーちゃんは五つ」と娘が自慢気に手を広げて
五を作った。
「ひろは何個ひろったらいい?」と聞くと
困ったような顔をして
「わかんない」と俯くので、
豆を三つ拾い、小さな掌に載せた。
そうすると「ひろは三つ。ひろくん、三才」
と目をくりくりさせながら笑ってたっけ。
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