第四話 史上最悪なアイツと狼山事件

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 やがて、ドドドドドと激しい地鳴りと共にプレハブがガコガコと揺れ始め、わずか一分足らずでこじ開けられた天井部分。 「え、え、え⁉︎ なに、なんなの⁉︎」 「キター」 「やあ、待たせたね火室くん、雪原くん! ご機嫌いかがかな?」    容赦なくメキメキとオンボロプレハブをなぎ倒しながら現れたのは……超合金でできた重機(クレーン付きバックホウ)に乗った木戸先生、だ。 「おやおや。ずいぶんお二人の距離が縮んだようにお見受けしますけど、お邪魔でしたかね?」 「いや助けてくれねえと凍るし。あと五分遅かったら凍ってたし」 「ちょちょちょちょ木、木戸先生⁉︎ な、なんなんですかその重機⁉︎ どうなってるんですか⁉︎⁉︎」 「ふふふ。雪原くん、〝皇〟の財力、舐めてもらっては困りますよ? 正規風紀委員会顧問として、これぐらい当然の嗜みです」 「そ、そうですか……」  そんな嗜み期待していない。  だが、まあ……助かったしよしとしよう。  一気に力が抜けたようにその場でへたり込む私だった……が。 「ところで君たち、例の春野くんの件は……」  木戸先生が重機から降りながら本題に入ろうとしたその時……少し離れた場所から高らかなバイク音が聞こえてきた。  ヴォンヴォン、パフパフ――って。 「……!」 「おや。ずいぶん賑わってますね。僕がここへ来るまではひとっ子一人いなかったはずなのに、これから集会でも始まるんでしょうかねえ……?」  木戸先生の一言でハッとした。  そうだ。事件はまだ終わっていない。  おそらくこの廃校舎の屋上に、呼び出した怪我人の総長・一ノ瀬 浬を潰すため、狼山高校の二村派が集まっているのだろう。 「……」    すっくと立ち上がった私は、破壊された壁を乗り越えてやってきた木戸先生にやや低体温症気味の火室を託す。 「雪原くん?」 「え。もしかしてさっきの今で、事件解決に動いちゃう感じ?」 「当然じゃない。どこかの誰かさんが温めてくれたおかげで問題なく体も動かせそうだし。すぐ終わるからあなたは木戸先生と安全な場所に避難するか先に戻ってて」  ぐるぐると手首足首を動かしながら笑ってみせると、火室はわかっていたかのように『やれやれ』と苦笑した。 「まあ、事件となるとなにいってもきかないのがアンタだしな。止めはしないけど……でも」 〝私がとことん付き合ってあげるから〟 〝これからはちゃんと、アンタの言うことも聞くから〟   「『約束』、ちゃんと守れよ?」  ――託されるように落とされた呟きに。 「わかってる。絶対に戻るから。私たちをこんな目に合わせた悪党どもに……ちょっと盛大なお仕置きを食らわしてくるわ」  そう言い残して私は。  この一件に終止符を打つべく、屋上に向かったのだった――。
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