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ꕤ ꕤ ꕤ
急ぎ足で屋上にやってくると、まさに今、処刑が始まろうとしているところだった。
「……今日から俺が狼山のトップだ。浬」
「二村てめえ……やっぱりお前の仕業だったのか」
先日道端で出会った一ノ瀬が、二村を含めた四十名ほどの不良たちに囲まれている。
ただでさえ多勢に無勢で分が悪いっていうのに、一ノ瀬はそれに加えて昨日のひどい怪我を負ったままの状態だ。
いくら最強の総長と言えども、この状態ではかなり厳しい状態だろう。
しばらく互いにじりじりと牽制し合っていたが、やがて――。
「くはははは、終わりにしてやる。やれ、おめえら!」
二村のその一言で、彼の従者たちが一斉に一ノ瀬に飛びかかった。
ふらつきながらも歯を食いしばり、拳で応戦する一ノ瀬。
「……るあッ」
一人倒し二人倒し、蹴りで三人目を突き放したところで……武器を持った従者の波に揉まれて、あっという間に取り囲まれてしまった。
「……ちっ」
万事休すといったところだが、そこにいるほとんどの者は一ノ瀬に意識を集中させているため、背後はガラ空きである。
遠慮なくそれを好機に変えて音もなく飛び出す。相手がこちらの存在に気づく前に足技、回し蹴り、投げ技、掌底にと、あらゆる制圧術で片っ端から敵を薙ぎ倒していく。
「なっ……!」
「え」
「怪我人相手にずいぶん卑怯な手を使うのね。やっぱりあなた、最悪だわ」
一ノ瀬の元に辿り着いた時には、ほぼ半分の不良たちがその場に倒されて再起不能の山となっていて。
唖然としたようにこちらを見つめる二村。
「な、なんでお前が……!」
「さあ、なんでかしらね。最悪な相方のおかげで命拾いしちゃったっていうか」
「な、な、な……」
「刑事オタクなめんじゃないわよ。いかがわしい奴らは全員まとめて警察署送りにしてやるから覚悟しなさい!」
バキボキと指を鳴らし、不敵の笑みを浮かべながら身構えると、私は――。
戸惑う一ノ瀬に構わず、宣言通り悪党たちを一匹残らずはっ倒し、後から駆けつけた(木戸先生たちが手配した)本物の警察官にまとめて引き渡し、事件は無事、解決に至ったのだった。
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