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空気を裂く音が聞こえるほど素早く手を伸ばしたその先にはもう一本の手があった。
小さな手だった。
2人同時に3kg板チョコの入った袋を鷲掴みにしていた。
「あ〜〜〜〜っw!」
「何奴!?なんと無礼極まりない所業ぞ!その最後の一つに先に目をつけていたのはこの美しき悪魔よ」
「おばさんこそ!何よ!私の方が一瞬、袋に触るのが早かったのよ!あそこにある監視カメラの映像でチェックすればわかるわ!だ・か・ら、その馬鹿みたいにデッカいゴッツい手を離して!」
相手は小学生の女子であった。
体が自分の2倍はあろうかという巨漢の彼女を前にも臆することはなかった。
「大人しゅう聞いておれば、なんたる無礼なことを申す小娘w」
お互いに一歩も譲らず、彼女らの手で引っ張られる袋は、かけられている真逆の力で今にも引きちぎられそうである。端から見ていれば、この構図は『大人気ない』の一言で片付いてしまいそうな勢いだ。
周囲の買い物客もこの異様な光景に息を飲んだ。スマホのカメラを向けるものさえ現れはじめた。
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