F∴A∴凛香とフーミンの事件簿2.8remix

3/34
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
そんな周囲の変化に彼女が気が付かぬはずがない。彼女は引っ張る力を緩めながら、反対の手で短く刈り上げた髪を撫で上げ、ため息をつきながらある提案をした。 「そなた、このチョコレートは本心から必要かや?」 力が緩まったその反対側で警戒心を解くことなく、小学生の方も力を抜いた。だが、袋は手放そうとしなかった。 「当たり前でしょ!毎年、この板チョコを使って作ってるんだもの。この板チョコは最高なの!今年はコロナの影響で原材料費高騰で絶対量が少ないのよ!だからっ譲れないわ!」 「それはわたくしとて同じこと。で、ものは相談なのじゃが…。そなたが作るものは何十人にも作るのかえ?」 「え?べ、別にそういう訳じゃないけど…」 顔を真っ赤にしながら少女は答えた。その反応を見て、ほんの少し満足したように巨漢の彼女は左手を胸の前に置き、同じく頬を赤らめうっとりした。 「わたくしは我が愛しいデュオニュッソス様お一人だけのために作るのじゃ」 そんな一人だけの世界でゴチている彼女のそばに黒い細身のスーツに身を包んだ老紳士が歩み寄った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!