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94 王宮魔道士
その白髪の爺さんは偏屈者で通っていて王族だろうが乞食だろうが同じような口調で話すのだ、とエイヴェリーを案内する女官はそう言うと一瞬だけ眉を顰めた。
そして彼に向かって『無理だと思ったら辞めていいと陛下の許可もあるのを忘れずに』と、若干心配そうにした。
3度目の今回もそうだった。
「本当に嫌だと思ったら、言ってくださいね」
彼と同じくらいの歳の息子がいると以前言っていたのを思い出した。
「大丈夫です。心配してくれてありがとうございます」
今回は何故か丁寧に頭を下げた彼に向かい
「無理をしないでね」
と、思わず涙ぐむ女官に首を傾げた。
「魔法を使えなくても生計は立てて行けるように陛下が図らって下さいます。まだまだ貴方は子供でいていい年齢なんですよ?」
――そうか、この女性は全てを失った少年の行末を心配していたんだ・・・
大怪我をして運び込まれた王城でそのまま療養させたものの、王弟の庶子を放り出すわけにもいかない国王は彼に竜を滅する者という肩書を与える事で王家が保護する事を公に示したのだ。
つまりたった13歳の成人前の子供であるエイヴェリーは王家の後ろ盾の元、王国の守護者という役割を担う事になったのだ。
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