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左程大きな祭りというわけでも無いが、隣村から泊りがけでやってくる村人や王都に出稼ぎに行った者の帰省もあるため宿屋としては年に一度の『書き入れ時』である。
当然宿屋の娘であるニーナも大忙しであり宿を手伝う年齢になってから祭りにはほぼ参加していない。
「え~ちょっとくらいいいじゃねえか」
「そうだぞ、そんなんじゃ嫁き遅れるぞ~」
口々に騒ぐ若者達を尻目に
「放っといてよ!」
目を三角にしてイーーーッと舌を出すと、干し上がったシーツを抱えて階段を登っていくニーナ。
「あーあ。サジェスが王都に行っちまって、今ならって思ったのになー!」
「バーカ、其れよかニーナの親父さんが強敵だろうよ」
「違いねえな!」
笑いながら冷えたエールのグラスを煽る若者達。
黒ずくめの客人がその様子を食堂の隅の席で、ひっそりと夕食を摂りながら肘をついて眺めていたのに誰も気が付かなかった。
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