32 暗闇とニーナ

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 気が付くとニーナは暗闇に居た。  何処かは分からないけれど、胸が痛くてつま先が冷たい。  手もなんだかどんどん痺れてきた。 「死ぬな! しっかりしろ! お願いだ! 目を開けて!」  誰かが側で自分の手を握り、叫ぶのが聞こえる。  ――温かい手だなぁ。  どんどん冷たくなっていく身体はまるで冷たい沼地に全身がはまり込んだよう。  ――誰かが泣いてる。泣かないで。大好きだから。ああ、死にたくないなぁ。ごめんね。約束したのに・・・・  胸を抑えて、カッと目を見開くと見慣れた自分の部屋の天井が見えた。  窓の外から小鳥の囀りが聞こえる。いつもの朝だ―― 「え? 何アレ」  びっしょりと寝汗をかいているのにも驚いたが・・・ 「自分が死ぬ夢なんて、初めて見たわ」  寝汗でベチャベチャでも、自分が生きている事に思わず感謝したニーナである。
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