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「い、いいですよ。……これです……」
心臓は激しく動揺し痛いほどだ。いっそこのまま病院送りにしてくれないかと思った。
結城は「失礼します」と言って指の背でメガネを押し上げ、画面に目を向ける。長い沈黙が部屋中に充満していった。
スクロールされる画面。
滝のように噴き出す脂汗。
結城は最後まで読み終え、市五郎の緊張から解放されるという期待も虚しく、更にもう一度読み直す。たっぷり時間をかけて二度目を読み終えた結城が、マウスから手を離し、静かに腿に手を置いた。
「……高山さん」
き、キタ……。
市五郎はゴクリと生唾をのみ込む。
「は、はい」
市五郎も知らず知らずに正座し、結城を見守っていた。呼びかけられ背筋が伸びる。結城はまっすぐ向きなおった。
「短編とおっしゃっていましたよね」
「……はい……」
「どうです? これをシリーズものにしてみませんか?」
「シリーズ……ですか?」
予想外の言葉に耳を疑う。
「実は新しく連載の枠がありまして。連載となると短編というわけにもいかないんですが……、面白いですよ。コレ。恋愛一辺倒でないのがいいですね。アクションやエンターテインメント性もあるし、クライム要素もある。濡れ場だけでなく、一味違ったドキドキもプラスされていて引き込まれます。いけますよ! 新しいと思います」
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