三、訪問者

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 結城さんは社交辞令ではなく、本気で言っていたのだ。こんな私に……。  真摯な瞳に打ち抜かれ言葉が、出ない。  胸の中で桃色の法被(はっぴ)を着た小人たちが集団で「えっほ、えっほ」と声をかけながら神輿みこしを担いでいる。その神輿はハート型だった。  市五郎は目を伏せ、深々と首こうべを垂れた。 「精一杯やりますので、ご指導、ご鞭撻のほどをよろしくお願いします」  こうして高山市五郎は、結城真人にあっさりと、完全な恋に落ちてしまったのである。
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