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結城へ短編データを渡してから一週間が経つ。結城から音沙汰はない。当たり前だが、差し入れも来ない。
「……はぁ……」
市五郎は冷凍庫の中を悲しげな表情で眺めていた。結城が土産で持ってきたアイスが一個しかないことを確かめているのだ。アイスが残りひとつになっただけで胸が締め付けられるとは相当重症である。
早く結城さんへシリーズ一話目が書けました、と連絡がしたい。結城さんの喜んでいる顔が見たい。そのためにも完璧な一話目を完成させたい。
市五郎の想いとは裏腹に、物語は遅々として進まない。
短編と違って長編は大変だ。まず、プロットからしっかり練り直す必要があった。主人公の細かな設定、登場人物も増やす必要がある。
主人公の勤めている表会社と裏の任務。陰謀を阻止するためのエキスパートが集まったチームの個性溢れる面々。
考えれば考えるほど調べ物が増えていく。その集めたデータをもとにプロットを構築し、いろんなトラブルを効果的に、どう話に盛り込んでいくか。主人公の相手役も敵か味方か分からない微妙な位置関係にある方がいい。敵対関係なのに惹かれてしまう。というパターンも面白い。
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