四、恋する男

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 こんなに脳を使ったのは生まれて初めてかもしれないという程、毎日頭を悩ませシリーズ全体のプロットを考えた。  人気が出なければ、いくらシリーズとして作品をだしたいと思っても叶わない。一話毎のクオリティを高め、かつ、エンターテインメント性を損なわないようにしないと。  考えながらスプーンでアイスを掬ったら、空っぽになっていた。  気を許せば、容赦なく寂しさが覆いかぶさってくる。  アイスが終わってしまったことにガッカリしている場合じゃない。プロットは完成した。結城さんにチェックしてもらい、ゴーが出たらあとは己を信じて書くしかない。あの短編をプロローグにして、時間軸を戻し、最初から書いていこう。  市五郎は携帯を取り出し結城へ連絡した。結城の都合が良ければ、いつものように出版社に持っていくつもりだった。しかし生憎、結城は外出中。しかも本人から「社に戻ったらすぐに確認します。じっくり検討したいので、メールで送ってください」と言われてしまった。  市五郎は落胆しつつ通話を終え、ため息を吐きながら結城へメールを送信した。
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