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「あなたが私の家で可愛らしく微笑んでくれたのが、とても嬉しかった。あなたに悲しい顔はさせたくない。どうか私のためにも微笑んでいてください」
結城の唇が、堪えるようにクッと小さくすぼまる。
「私にとって、あなたは太陽のような存在なんです」
結城の白い頬に雫がポロポロと零れ落ちた。ギュッと目を閉じた結城は、震えながら俯き、何度も小さく頷いた。
ぽたぽたと飴色のテーブルに弾ける涙。
きっとメガネにも涙の水たまりができているだろう。
市五郎は結城の手を握ったまま、もう片方の腕を伸ばし結城の頭をポンポンと撫でた。料理を持ってきたウェイターが少し離れたところでオロオロしている。
「……結城さん、ホットケーキがやってきたようですよ」
グスッと鼻を啜りあげ、顔を上げた結城が泣きながら「はい」と微笑んだ。
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