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「あ、違うのです。結城さんが……その、インスピレーションを与えてくれたのです」
結城の頬がうっすら染まった。……ように市五郎には見えた。
「光栄です。僕で良ければ何でも言って下さい。できることがあれば、喜んでお手伝いします」
結城の言葉に、「じゃあ、そのネクタイを外して、シャツをズボンから引き抜いて、上から三つボタンを外してもらえますか?」などと言いたくなってしまう。言ったらただのエロオヤジだと、市五郎は己を叱った。
「……結城さんはいてくれるだけで、私の心を沸き立たせます。なので、また、何かのついでにお顔を見せてください」
変態めいた欲望をまともな大人の言葉に変換し伝える。
結城は照れくさそうに俯いただけだった。
遠まわしな言い方をしたつもりだったが、やはりエロオヤジと思われてしまったのだろうか。
己の発言が知らず知らずのうちに、エロくなっているのかもしれない。と不安を覚える。妄想のしすぎだろうか。いや、これは想像だ。
「……スイーツの差し入れに来ますね。おやつを食べに」
ふふっと小さく笑った結城の仕草は、やはりしとやかで、少しだけ淫靡な気をまとっているような気がした。
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