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◇ ◇ ◇ ◇
市五郎が書き上げたばかりの第二話を読み終え、「ハッ」と結城は息を飲んだ。その表情のままバッと市五郎を見る。目が合うとまた原稿へ目を向ける。その様子は今までとずいぶん違って、ただの一読者のようだった。そして、感想もまた編集者のものではなかった。
「でっ?」
「で?」
いつもの落ち着いた様子はどこへやら。プロットで話の流れを把握しているはずなのに、「どうなるんですか!」と食いつかんばかりに詰め寄ってくる結城の反応に思わずクスッと笑ってしまう。
とても嬉しい反応だ。目をキラキラさせて市五郎を見る結城はとても可愛かった。
「あぁ〜、気になる! もぉ、高山さんも人が悪いですよ。こんな所で次の原稿までおあずけだなんて」
両こぶしを握りながら「クッ」と目を瞑り、顔を背ける結城の悔しそうな姿はとても微笑ましい。それに最高の褒め言葉だと思う。
「……ホッとしました」
「書きあがるまでここで待機していたいくらいですよ」
「えぇ? あははは」
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