五、内密の依頼

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「私はこの通りです。見たまんまですよ」  つい苦笑交じりに答えてしまい、それにも後悔した。 「よかったです」  ニッコリと微笑む結城に「え?」と戸惑う。何が「よかった」なのか。  それって……。  淡い期待が市五郎をときめかせる。ドキドキしながら真意を促した。 「……と、言うと?」 「邪魔されなくてすみますからね」 「……なるほど」  執筆の時間が減ると言いたいのか。そうだよなと納得する。期待する方がどうかしている。  市五郎がションボリしていると、さらに結城が言葉を続けた。 「僕のためにも、そのままでいて下さい。なんて、傲慢ですよね」  さっきみたいに「アハハ」と笑い飛ばせばいいのに、結城はいつものしとやかでありながらも、少し照れる仕草を見せた。  グッと胸に何かが迫ってくる。  市五郎はそれを体の奥へ流し込むようにコーヒーを飲み干した。
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