六、雷鳴

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 戻ってみると机の上に置いてある携帯が点滅している。音消しにしてあったから気付かなかったが、着信があったらしい。相手は例の長編で扉絵と挿絵を担当しているイラストレーターの曽根からだった。  なんだ? 電話など初めてだ。  いつも結城伝いにイラストチェックを行っているため、イラストレーターと言葉を交わしたのは初回の顔合わせの時だけだった。  市五郎は予想外の相手からのコンタクトを不思議に思う。  電話をかけ直すべきなんだろうが……。  躊躇していると、今度はメールが届く。留守番電話サービスからだ。  もしかして、要件が吹き込んであるのかもしれない。それなら電話をかける必要もない?  社交的とは対極にいる市五郎はホッと胸をなでおろし、留守電サービスの番号をタップした。 『オアズカリシテイル アタラシイメッセージハ イッケンデス……』  機械アナウンスの後、早口でまくし立てる明るい声。 『……こんにちは。お世話になってます! 曽根ですぅ。えっと、至急お知らせしとかないといけないことが……さっき、と、ゆーか、昼? 結城さんと打ち合わせしてて、つい主人公のモデルは結城さんだって言っちゃったんです。ごめんなさい~~~! 要件はそれだけです! じゃ、また!』  な、なんだとっ!?
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