六、雷鳴

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 市五郎は結城の耳に唇を寄せた。体を竦める結城の耳を唇ではさみ愛撫すると、華奢な身体がフルフルと震え、息を飲む。下着の上からモノに触れれば、結城の腰がキュッと引く。初めてする行為だったが、これが結城のだと思うと、酷く高ぶった。 「あ、あのっ、ま、待って」 「待ちますよ」  耳元で囁きながら、布の上から緩く刺激を送る。結城は耐えるように目を閉じ、顔を少し背け、与えられる刺激に怯え、体を小さく震わせる。その姿は本当に処女のようだ。 「気持ちよくないですか?」  市五郎の問いに、小さく震えるように頷く。ふうふうと聞こえる微かな呼吸。  その様子に手をどけ、体重をかけないように結城の顔の横に肘を突いた。  閉じていた瞼が開き市五郎を見る。 「あなたを好きでいて、いいですか?」  市五郎の控え目な告白に結城は瞳を揺らしたまま、黙って見つめ返す。  その瞳に映ったのは逡巡だったのか。答えを待ち、同じく黙ったまま見つめ返す市五郎に、結城は小さな声で「はい」と答えた。  ホッと力を抜き、結城へ微笑む。市五郎の目頭が熱くなった。まばたきした途端、結城の白く柔らかな頬に一粒の涙が落ちてしまう。  市五郎はそれを指で拭い、礼を伝えた。 「……ありがとう」
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