小さな芽

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 圭斗は学ランから紺色のブレザー姿になった。通学電車の方向と時間は以前と変わらず、七時三十八分に乗り込む。ホームには桜の花びらが入り込んでいる。    相も変わらず人の少ない車内を見渡す。凛とした姿勢の良い、私立女子高の制服を着たあの人がいつも座っていた席には、一筋の朝日が指している。そして圭斗が乗り込んだ次の駅で真新しい裾が余っている学ランを着た男の子が、その席に座った。  小さな芽は茎が伸びることもなく、摘まれることもなく、ただ圭斗の心の隅で佇んでいるままだった。  
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