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音が欲しくて、私は耳を塞ぐ。
学校でも本を読むのが好きで、休み時間も静かに過ごすことが多かった。
お昼ごはんを食べるとき以外で口を使わなかった日もあるかもしれない。
だから、「おとなしいね」と言われることもよくあった。
だけど、好きじゃない。
「音無しいね」と言われている気がするから。音がないのは、いないのと同じな気がするから。
学校から帰ると、おかえりー、って聞こえた。だけど私は返事をせずに、玄関からそのまま階段を上がって自分の部屋へ入った。
通学用のバッグを投げると、ぼすん、と音がする。
ベッドに仰向けに飛び込むと、ぼすっ、と音がする。
この子たちだって返事ができるのに、私は音無しだ。
私にだけ音がないのを否定したくて、人差し指で両耳の穴を塞いで、目を閉じる。
私の奥底から、ごごごご、と音が溢れ始める。そのまま息を止めて、音を掴みにいく。
暴風のような、雪崩のような、強い音が指先を通して押し寄せてくる。
耳の中であばれる命に、私は今日も安心する。
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