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私は額に汗が浮いていた。
それも吹き荒ぶ風が教えてくれた。
自転車の青年は何度も振り返りながら去って行った。
これも亜佳里の呪いなの…。
私は変な呼吸でドラッグストアまで歩く。
そんな事はどうでも良い。
周囲に変な目で見られても漏らしてしまう事を考えれば何て事は無い。
ポケットの中でスマホが振動してる事に気付く。
しかし、今はスマホを出して確認する事も無理な状況。
ましてや電話なら、相手と会話する必要も出て来る。
それは絶対に無理だ。
私はゆっくりとドラッグストアへと歩く。
何故か、国語の教科書に載っていた太宰治の『走れメロス』を思い出した。
メロスは親友のセリヌンティウスを救うために途轍もない距離を走った。
彼は親友のために走ったのだけど、私は今、自分の尊厳の為…、自分を救うために歩いている。
自宅から五分の距離のドラッグストアとメロスが走った途轍もない距離の価値は絶対に私の方が上だ。
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