卵が割れたら

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 私は小学5年生になっていた。  クラスメイトのマリはいつも私を導くように一緒についてまわる。 「美菜ちゃん。また一人でおそうじやってるの」  お掃除当番は順番にまわる。  私が誰もいない校舎の裏庭にほうきをかけて、ちりとりでとったゴミを焼却炉のフタを開けて捨てようとしているとき、声をかけられた。 「今日のここの掃除当番は、他にアッキーとかマサヤンとかもいたはずでしょ。あいつら、教室以外のそうじは全部さぼって美菜ちゃん一人にやらせてるんだよね」 「忙しいんじゃない。アキちゃんは塾があるし、マサオカくんはサッカークラブやってるし」 「そうやっておとなしいから、あいつら調子に乗るんだよ。先生に言いつけなよ」 「別に構わないの、私は。一人の方が捗るしね」  そうなのだ。甲高い声でうるさいアキや体が大きくて威張っているマサオカがいると本当に迷惑なのだ。彼らはいなければそれでいい。彼らに「たまご」の必要もない。 「私がこっそり先生に言ってあげようか。美菜ちゃん、従順すぎるよ」  むしろ私が「たまご」の用意をするのはマリにたいしてだ。  学級委員の彼女は、自分のためにこの私を利用しているだけなのが透けて見える。従順すぎるのはあなた。先生に対してはとても素直なよい子になる。  自分を弱い子の味方に見せかけるために私を利用しようとするのはうっとうしい。  おため顔のマリの表情をすっとたまごにする。
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