第五章 初デートで縮まる距離は確実に

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「さっきは」 「大丈夫です、わかっています。私が泣いたから、慰めようとしてくれたんですよね」  彼の言葉を遮って勢いよく続けた。  早口で捲し立てたあと、彼が先ほどのキスの件を口にしようとしたと決めつけて先走った自分が恥ずかしくなる。かえって意識しているのがバレバレだと白状したようなもので、いたたまれなさに久弥さんに背を向けた。  私から話題にして気まずくしてどうするの。そもそもキスされた意味とか、理由を突き詰める必要はない。そういう流れだっただけ。彼に深い意味だってないはずだ。  でも、そうか。久弥さんは、泣いたらあんなふうに慰めてくれるんだ。  ズキリと胸が痛んだ瞬間、背後から温もりが伝わってきた。久弥さんに抱きしめられたのだと自覚したときには逞しい腕が前に回され、しっかりと彼に捕まっていた。 「慰めようとしたわけじゃない。自分事のように泣いて怒ってくれた瑠衣が愛しかったから」  一瞬で体温が上昇し、パニックを起こしそうになる。体勢も相まって久弥さんの言葉をどう捉えていいのかわからない。 「あ、あの」  すると不意に耳のうしろに唇を寄せられ、驚きで肩を縮めた。 「ただ、瑠衣は俺に妻を買ったと言ったが無理はさせるつもりはないんだ。特権だと言ってくれるのはありがたいけれど、されて嫌なことははっきり言ってほしい」  切なげな声で訴えかけられ、ふと彼の立場で考える。
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